空 いろいろなことがありますね。世界の大きなできごとに自分の些細な悩み事などどうでもよいことに思えます。先日読んだ本に、おもしろいことが書いてありました。私たちが空に見上げているのは、空いっぱいの悠久の過去であると。何分前か、何億年前かはわからないけれど、過去の光が空に広がっていると。何年も前に放たれた光がやっと地球の我々の目に映る時には、もう光の主は存在していないのかもしれない。

 そんな話はよく聞くのだけれど、並んで書かれていたのが、空の光が過去のものであるのと同じように、我々が見ているすべてのものに「現在」のものはないのではないかと。1秒にも満たない過去ではあるけれど、遠くに見える誰かの背中も、さよならと手を振る友だちの姿も、テーブル越しの恋人の笑顔も、すべては過去のものではないかと。無限分の1秒のずれが我々にもたらしているものはわからないけれど、刻々と過去になりつつある世界で、こんにちはが、次の瞬間にはさよならになっているかもしれない世界で、誰かと同じ瞬間を生きることができるだろうか。今を離さないように。まず自分が過去に生きているのではいけない。過去を築きながら道の先端にいないといけない。